売春罪で投獄され、麻薬容疑で逮捕され、人種差別に苦しんだビリー・ホリデイのドラマチックな人生は、ダイアナ・ロスの主演で映画化された。確かにビリーほど壮絶な人生を送った歌手も珍しい。『レディ・デイ』に聴かれる30年代の若くてみずみずしいビリー。ここにはまったく正反対のビリーがいる。58年録音だから、本作に聴かれる歌声は亡くなる前年のもの。
晩年のビリーは精神的にも肉体的にもボロボロの状態だったが、決して歌うことをやめなかった。声は衰え痛々しいほどだが、気力をふり絞って歌う。これはもう執念としかいいようがない。バックはレイ・エリス編曲、指揮のストリングス入りオーケストラ。
エレガントなエリスのアレンジ、そして甘美な弦の調べ。それとは対照的にビリーの歌声は、世の中の不幸を一身に引き受けたかのように苦しそう。両者のコントラストがはっきりしていることによって、ビリーの執念がじかに伝わってくる。こうした状況だからこそ、その歌声はさらに感動的だ。(市川正二)

 ・ amazon : Lady in Satin / Billie Holiday

 ・ Spotify : Billie Holiday : Lady in Satin (1958)

ディスク:1
1. I’m a Fool to Want You
2. For Heaven’s Sake
3. You Don’t Know What Love Is
4. I Get Along Without You Very Well
5. For All We Know
6. Violets for Your Furs
7. You’ve Changed
8. It’s Easy to Remember
9. But Beautiful
10. Glad to Be Unhappy
11. I’ll Be Around
12. The End of a Love Affair (Stereo Take 4 with Vocal Overdub Take 8)
13. I’m a Fool to Want You (Mono Take 3)
14. The End of a Love Affair (Mono Take 4 with Vocal Overdub Take 8)